俺の事を少しばかり紹介すると、俺は、おばあちゃんっ子な子供だった。

 共働きの両親に、よく彼女にあずけられ、俺の遊び場は彼女の経営する、アンティークショップばかり。

 自然と、俺はアンティークなものに興味をもつようになった。

 ディスプレイキャビネットや、ショーケース。

 テーブルランプに、キャンドルスタンド。

 洋画の世界に出てくるような、美しい古いものにかこまれ、楽しかった。

 しわくちゃになった、優しい手。美しく年をとった彼女の笑顔の傍も、俺にとっては、何よりも、どこよりも、大好きな場所だったんだ。

 そんな彼女は、5年前。この世から、いなくなった。

 大人になっても彼女の店によく顔を出していた俺は、彼女が大切にしていた店を譲り受けた。

 勤めていた、わりと大手の会社を辞めて、両親は怒っていたのを覚えている。

 あの時、俺は30にもなって、口うるさいことを言われたくないと、遺言で譲り受けたのは俺だから、余計な事はさせないと、声を荒げて怒った。

 なぜなら、俺の両親は二人とも、彼女の大切なアンティークショップは、売却して金に換える予定だったことを知ったからだ。

 店内にある、キラキラ光る古いシャンデリア。

 ステンドグラスを使ったものや、ヨーロッパの貴族が使っていたような椅子やテーブル。

 繊細な作りをした家具や、レースに、オルゴール。

 古く、価値のある、宝石箱。

 システムエンジニアで、パソコンやシステムには詳しい両親。

 アンティーク品に関しては、全く興味がない人間に、その価値はお金にしか見えない事実が、悲しかった。

 譲り受けたばかりのあの頃、両親は、『たかが個人商店だ。うまくいくはずない』と、『興味を持つ人間なんてごく一部だ』と、バカにしていた。

 確かに、年をとっていた彼女は、お店の売り上げというより、年金で暮らしていたに近い。

 顧客もいたが、毎日会に来てくれるほどでもなかった。

 でも、やり方なんて、いくらでもあるんだ。

 5年経過した今、現代の流れに乗って、俺はネットビジネスも導入し、上手くいっている。

 両親も、それを見てやっと干渉しなくなった。

 俺は、大好きだった場所を守っているんだ。

 アンティーク品が好きなだけじゃない。

 この店は俺にとって、幼い頃の思い出の詰まった場所なんだ。

 なくしたくは、ない。