ー…



「乾杯ー!」



それからしばらくが経った、一学期の終わりの日の夜。学校近くの駅前通りにある、焼き鳥が美味しいことで有名な居酒屋の一室では、納涼会と称した教師たちの飲み会が行われていた。



「成田先生、ビールどうぞ」

「おっ、日野ちゃんありがとー。やっぱお酌してもらうなら若くて可愛い女の子だよねぇ」

「あら成田先生、何か言いました?」

「いいえ何も。ね、日野ちゃん」

「あ、あはは…」



先日の真面目な顔つきとは打って変わってふざけて言っては年上の女性陣に睨まれる成田先生に、私は苦笑いを浮かべた。

その視界の片隅には、少し離れた席で他の先生方と飲む櫻井先生の姿が映る。



「…、」



彼の心の蓋を開けたい。そう心に決めたはいいものの具体的にどうすればいいかは分からず、結局あれ以来一度も櫻井先生とは目も合わせてない。

どうすればいいんだろう…そうはぁ、と溜息をついては私はグラスの中の甘いカクテルを一口飲んだ。



「そういえば日野先生、手はもう大丈夫なんですか?」

「あ…はい。もうすっかり」

「ならよかった。あの日は廊下に血が点々と落ちていて大騒ぎだったし」

「お騒がせしてすみません…!」



向かいに座る東先生が見た先、私の左手にはまだ巻かれている包帯。深く切ってしまった手はあれから数日は痛みとの戦いだったものの、今ではすっかり傷は塞がっている。


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