月日は廻り、光祐さまは、三十二歳の桜の季節を迎えていた。


 光祐さまが桜河電機に入社して十年が経ち、

 工場長を経て、現在では副社長としての貫禄を示していた。


 土曜日の春の夜。

 光祐さまは、家族を連れて都の音楽会へ出かけた。


 音楽ホールのロビーで、取引先の重役と顔を合わせた光祐さまは、

 優祐と祐雫をロビーに待たせて、祐里を伴って席を立った。


「祐雫、手洗いに行ってくるけれど、ひとりで大丈夫」

 優祐は、人混みのホールに祐雫を一人で置いていくのを躊躇った。


「ええ、優祐こそ、迷子にならないように」

 優祐は、祐雫を気遣いながら、手洗いへと向かう。


 祐雫は、双子の優祐へ大人びた注意すると、

 ロビー中央の熱帯魚の大きな水槽を見つめていた。

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