約束の時間が近付くと、里桜は憂鬱な溜め息を吐いた。

今日、生まれ育ったこの家を離れ、三ヶ月後と決まった結婚の為、冬矢の家に移り住む。


親の決めた婚約者の高遠冬矢とは、三年前に初めて会った。

切れ長で透き通った瞳が印象的な、完璧に整った顔立ち。
長身で均整のとれた身体。
落ち着いた大人の物腰。
まだ19才だった里桜は、冬矢に会って一目で恋に落ちた。
心地よく響く低い声に甘く囁かれると、身体から力が抜けた。

冬矢も里桜を受け入れてくれて、穏やかに付き合いが始まった。

けれども出会ってから2ヶ月後、冬矢は泣き叫ぶ里桜の言葉に耳を貸すこともなく去っていった。

冬矢をを諦められない里桜は、何度も連絡をして会って欲しいと懇願した。

会って、別れの原因となった誤解を解きたかった。

けれどその機会を与えられる事はないまま時間は流れて行き、里桜は冬矢と会う事を諦め冬矢を忘れる為の努力をする様になっていた。

そしてやっと、心から冬矢への想いを閉め出せたと思っていた矢先、父親から告げられた。

高遠冬矢と結婚しろと。

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