ドレスを見に出かけた日から10日が経っていた。

あの日から冬矢の姿を見ていない。

相変わらずの生活をしているのは気配で分かるけれど、冬矢が里桜の部屋を訪れる事は無かった。

「里桜様、お出かけですか?」

自室から出て階下に降りた里桜に、黒木が声をかけてきた。

「はい、実家に行ってきます」

黒木に対して、里桜は常に気まずさを感じていた。

(この人は、冬矢が愛人を連れ帰り何をしているのか知っている)

黒木とその妻は、高遠家に住み込みで働いている。

(私の事、惨めな女と思っているかもしれない)

黒木に内心どう思われているのか、考えると里桜は憂鬱な気持ちになった。

「行ってきます」

何か言いたげな黒木を残し、里桜は足早に家を出た。



実家の離れに行き、優斗を公園に連れ出し二人で日光浴をした。

お互いの近況を報告し合ったり、愚痴を言い合ったりしているうちに、あっという間に、夕方になり辺りが夕焼けのオレンジに染まった。

「あっ! もう帰らないと」

「今日は早いね、何処か行くのか? 服もいつもと違う感じだし」

優斗は不思議そうな顔をして里桜を見た。

「うん、久しぶりに友達と会うの」

里桜は、優斗が立ち上がるのを手伝いながら答えた。

「そうか、楽しんでおいで」

優斗は優しい微笑みを浮かべ、里桜の差し出した杖を受け取った。

日が落ちてきて薄暗くなった道を、優斗のペースに合わせてゆっくりと歩く。

ふと会話が途切れると、優斗が里桜を見つめながら、躊躇いがちに言った。

この作品のキーワード
恋愛  政略結婚  すれ違い  婚約者