里桜の部屋から出て扉を閉めると、冬矢は深い溜め息を吐いた。

昨夜遅くひどく酔って帰って来た里桜は、顔色も悪くとても具合が悪そうに見えた。

今は多少回復したように見えたけれど、昨日の今日の事なので部屋でゆっくり過ごすように言うと、突然顔色を変え怒り出した。

置いていかれる事に怒りを感じているのかと思い、一緒に行くかと誘うと更に機嫌が悪くなった。

里桜が何を考えているのか分からない。

いつも自分に対して壁をつくり、決して近寄らせないようにしている。

原因はよく分かっていたけれど、昨夜の里桜の態度からわだかまりは解けたのだと思っていた。

けれど今日になると、里桜は再び刺々しく冬矢を拒絶した。

冬矢は階段を降りながら、昨夜の里桜の様子を思い出していた。

水が欲しいと訴えて来た里桜に口移しで水を与えた。

抵抗するかと思っていたのに、里桜は大人しくそれを受け入れた。

そしてただ水を与える以上に深く唇を重ねても、里桜は震える手でしがみつきながら受け入れていた。

それなのに……1日で里桜の態度はガラリと変わってしまった。

「お出かけですか?」

一階に降りると、黒木が声をかけてきた。

「帰りは、それほど遅くはならない……里桜の体調が悪いから注意してやってくれ」

冬矢はそう言うと、黒木が頷くのを見届け家を出た。

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