用意して貰った朝食を食べた後部屋に戻った里桜は、ソファーに座りうつらうつらしていた。

この家で、里桜がやるべき事は何も無かった。

話す相手さえいない。

暇を持て余し読書を始めたけれど、昨夜良く眠れなかったせいかすぐに睡魔に襲われた。

もう少しで完全に眠りに落ちるという時、
「昼寝とは優雅な事だな」

馬鹿にしたような響きを含んだ声をかけられ、一気に目が覚めた。

直後、冬矢の冷たい瞳と視線が絡みあう。

「……何か用ですか?」

里桜は視線をそらしながら起き上がり、素っ気ない声を出した。

顔を見ると昨夜受けた屈辱が蘇って来て、冷静ではいられなくなりそうだった。

「昼食の誘いに来た。未来の妻が来たのに、まだろくに話も出来てないからな」

里桜の態度など気にも留めずに言う冬矢に、舌打ちをしたい気持ちになった。

「昨日は忙しそうだったものね! 私の事なら気にしなくていいから、ランチは愛人と行ったらどう?」

思わずむきになってしまった里桜を、冬矢は面白そうな顔をして見た。

「もしかして、嫉妬しているのか?」

笑みを浮かべたその顔は、里桜を見下しているようだった。

「自惚れないでよ! あなたなんかの事で嫉妬する訳ないでしょ?」

「それなら、何故怒っているんだ?」

冬矢の余裕の表情に、苛立ちは益々高まっていく。

それでも罵倒したい気持ちをなんとか堪えて、冬矢から目を逸らした。

冬矢は里桜が怒り、感情的になるのを楽しんでいる。

もしかして、わざと怒らせようとしているかもしれない。

(思い通りになんて、絶対ならない)

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