ポケットに婚約指輪

流されたいのに


 里中さんは、私の腕を引っ張って立たせると美亜さんに手を振った。


「悪かったね。つれてくよ」

「はい、ぜひまたお越しください」


にっこり笑って見送ってくれる美亜さん。
私は少しふらついた足取りで彼に支えられながら付いていく。


「さて。どうしようか。どこかでコーヒーでも飲む?」

「え?」


でも、先に刈谷先輩を帰してそれはさすがにまずい。

私の顔を見て、里中さんは薄い笑みを貼り付ける。


「それとも、介抱されたい? どうなっても知らないけど」

「!」


かあっと顔が熱くなった。何を言い出すのこの人。


「こ、コーヒーにします!」

「そうだね。のんびりできそうな店がいいよね。うん。あそこにしようか」


彼の頭の中には、この辺りのお店は全部インプットされているのだろうか。
パソコンで検索した時みたいにぱっとお店が出てくる。

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