「ムクギさん、どうかしら?この絹、紅が綺麗に織れたと思わない?」


ユティマが、暖色系の織物を広げ、ムクギへ見せる。

彼はその無表情を崩すことなく、「そうですね」と感情がこもっているのかいないのかわからないような返事をした。


ミューザの中心街から、少し外れた場所。

知らないと気づかないような場所にある、小さな小さな店。

若い女店主ユティマが経営するここは、エルフォードの取引先だ。

そして今、リロザとムクギは、仕入れのためにこの店を訪れている。

…というのは、建前で。


実は先日、リロザ宛に届けられたユティマからの『ムクギさんを連れてきて』という手紙を受けてのことだったりする。

…いや、私だって、こんな私情のために、いちいち片道だけで一晩かかるような場所へは来たくない。

しかし、『連れてこなければ契約を切る』なんて脅しが手紙の端に書かれているのだから、仕方がないのだ。


…それにしても、話が長い。

ユティマは次から次へと絹織物を出しては、ムクギに出来栄えを披露している。

この女店主、どうやら私の執事に好意を抱いているらしい。



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