トールサイズ女子の恋【改稿】
◇第3章:探し物と、お礼はデート?!
 歓迎会から数週間が過ぎて、総務課の仕事や社内の雰囲気にも少しずつ馴染んできたかも。

 四つ葉出版社は服装には厳しくないので、今日はカジュアルを意識してデニムと白シャツに紺のカーディガンを組み合わせ、パンプスはいつものようにヒールの低いものにした。

 転職したら社内の雰囲気に馴染めるか不安だったけど社員の人たちは皆優しく接してくれるし、お昼ご飯の時間でも女子社員たちと話せるようになってきたので、暫くは四つ葉出版社で働いていけるかな。

「在庫室に行ってきます」
「はーい」

 私はスマホをデニムのポケットに入れて在庫室に向かうと、一覧表を見ながら任せられている備品のチェックを行い、チェックが終わった段ボールを持ち上げて棚に戻すのを繰り返す。

 印刷会社の時は座り仕事が多かったし、こうして体を動かせるのもいいな。

「よいしょっ…と」
「あれ?星野さんは何でここに?」
「水瀬編集長、お疲れ様です」

 すると水瀬編集長が在庫室に入って、両手には数十冊ほどの雑誌を抱えている。

「私、備品のチェックを任されているんです。水瀬編集長はどうしてここに?」
「雑誌を保管する場所が無くなってきちゃってさ、総務課の課長に相談したら暫く在庫室で保管しても良いって言われたんだ」
「それでしたら段ボールをどかしますので、空いてるスペースを使って下さい」

 私は棚に置かれている段ボールを整理して、雑誌を置けるスペースを作った。

「適当にスペースを空けちゃいましたけど、ここなら大丈夫ですよ」
「助かるよ、ありがとう」

 水瀬編集長は空いてるスペースに雑誌を置くとふぅと息を吐き、顔に疲れが見えるし、やっぱ雑誌を作るのは大変なんだろうな。

「星野さん、動かないで。埃がついてる」
「えっ?」

 水瀬編集長は右手を延ばすと、私の前髪に触れた。

 急に触れてくるから心臓の音がドクンと鳴り、どうしたらいいか直立不動になる。

「取れたよ」
「あ、ありがとうございます…」

 私はドキドキしたままで水瀬編集長は平然としていて、なんだか水瀬編集長のペースに引き込まれそうになる。
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