トールサイズ女子の恋【改稿】
◆第6章:どうしてディナーに誘ったんだろう
 うう…、昨日は最新号の『Clover』のアンケートに時間をかけて答えていたせいなのか寝たのが遅く、頭がぼんやりとしてる。

 四つ葉出版社に出勤すると課長の姿は無く、総務課の壁に張られてあるホワイトボードには課長の名前の横に『3階会議室にて会議出席』とあった。

「おはようございます」
「おはよう。何だか顔色が悪いけど、具合悪い?」
「熱は無いので大丈夫です。たぶん、夜遅くに寝たせいかもしれないです」
「それならいいんだけど…」
「駄目な時はすぐ言いますね」

 隣に座る木村さんが心配そうに小声で聞いてくるので、ただの寝不足でそんなに顔色が悪くみえるのかな。

 あまり心配かけてはまずいから努めて明るく振る舞い、課長が不在のままでミーティングを行う。

 今日の私の1日の流れは午前中はいつものように郵便物の配布と女性社員のサポートをし、午後は3階にある会議室の掃除をすることになった。

 会議室の鍵は普段は課長が管理をしているけれど、掃除をするために事前に木村さんに預けたそうで、私はいつものように郵便物を配りに2階へ上がる。

 今日の郵便物はスポーツ部だけで郵便物を渡してファッション部の方を見ると、いつもなら慌ただしい雰囲気なのにファッション部の社員の人が少なくて、静かだと変に感じるなぁ。

 編集部を出て総務課に戻ると、すぐ女性社員のサポートに徹する。

 前職で事務の経験があっても取り扱う書類の内容は違うし、出版に関する専門用語に慣れるまで大変だ。

 女性社員と一緒に資料作成を続け、きりのいい所でお昼休憩に入り、話題の中心は最新号の『Clover』で、お気に入りのページやモデルが着ている服のお店について盛り上がる。

「今月号の恋愛ページは、とても読み応えがあったよね」
「私も読みました。男性側の理想の恋愛って、リアルさがありますよね」
「ハハッ…」

 私たち女性陣が木村さんの方に顔を向けると、木村さんは反応に困って笑って誤魔化していた。

 男性の理想の彼女って、私みたいに夢見がちじゃなくて家庭的な子を好きになるのが多いよね。

 私なんて料理が得意です!とかないし、これじゃ30歳を過ぎて独身のままかも。
< 40 / 162 >

この作品をシェア

pagetop