キスマーク
彼と彼の狭間で




「で、どうだったの?」



昼休み。社員食堂にて日替わりが乗ったトレーをテーブルに置き、席に着くなり麻里が聞いてきた。


今朝は更衣室ではすれ違いだったし、給湯室でも顔を合わせないままだったから、この昼休憩が存分に私語が出来る時間。



「うん。料亭で京懐石食べて地酒飲んで良かったよ。鱧なんて滅多に食べれないしね」


「鱧!?私、そんなの食べたこと無いよ!すっごい羨ましいんだけど~!?」


「でしょ?」


「―…って、ちょっと待ってよ、詩織」



そうじゃないでしょ??という顔で麻里が私をにらむ。



「食事の話じゃないでしょ!どうだったのよ、医者!」



社食にしては美味しそうな日替わりを目の前に箸も持たないまま、かなりの迫力で迫ってくる。



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