想いは硝子越しに
何時もみたいに友達とお茶してからタイムサービスしてるスーパーに寄って家に帰ってきた。

鶏のもも肉が凄く安くなってたからついつい衝動買いして、ただ今冷蔵庫の中と睨めっこ中だ。

とりあえず安かったとり肉は賞味期限が心配だから使うとして残ってるのは三ツ葉に玉葱か……今日は親子丼!と献立を決めてエプロンに手をかけた時だった。

「ただいまー!」
「あ、お帰りなさい!」

玄関からお母さんの声が聞こえてきた。

時計は夜の8時を回った所で、こんな早くに帰ってくるのは珍しい。何時もならもっと遅いのに。

「今日のご飯何ー?」
「とり肉安かったから親子丼!!」

ちょっと気にはなったけど、早くご飯作っちゃおうと思って玉葱の皮を剥き始めたら案の定急かす言葉が聞こえてきて思わず笑っちゃった。

きっとお腹が空いてるんだなって思ったから超特急で完成させて食べるばっかりにしたらお母さんが普段滅多にしない正座なんかしてじっとこっちを見てるの。

どうしたんだろうと思って持ってた箸を置いてマジマジと見つめてたらお母さんの口からとんでもない言葉が出てきたんだ。

「あのさ、驚かないで聞いて欲しいんだけど……」
「うん、何?」
「あたし、再婚しようと思うんだ。」

私の思考は一瞬で停止した。

お母さんは今何を言ったんだろうと上手く働かない頭をフル回転させてみる。

今再婚って言ったよね?うん、言った。

お母さんは私という子供がいるとしても世間一般から言えば独身なわけで、勿論結婚出来る。

しかも今まで女手一つで必死に子供育ててきたんだ。

「再婚…するの?お母さんが?」
「そう。どうかな?」

お母さんがどれだけ頑張ってたか、傍に居た私が一番よく知ってる。

自分より私を優先して朝から晩までヘトヘトになるまで仕事してきたんだもん、お母さんが幸せになれる事を反対する理由がないよ。

「じゃあ新しいお父さんになる人に会った時にどんな話するか、考えとかないとね。」

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