ブンちゃんとぱらぱら小道

お花屋さん



果物屋さんのお兄さんにお礼とお別れを言って、ブンちゃんはまた歩き出した。

てくてく。てくてく。


「好きなこと、好きでないこと、幸せになる」

小さな声で呟きながらブンちゃんは歩く。

ひとつひとつ整理しないと、今なにを考えているのかさえ分からなくなってしまいそうだった。

少しずつ前に進みながら、ブンちゃんのお散歩は続く。


「ブーンちゃん」

目の前にぱっと赤いガーベラが現れてブンちゃんの名前を呼んだ。

ブンちゃんが目を丸くしていると、赤いガーベラはぐっと近づいてブンちゃんの鼻先をすりすりと擦った。


「わ、わ、わ」

目をしぱしぱさせてブンちゃんが戸惑う。するとガーベラはすっと引き下がってくすくすと笑った。


「ごめんごめん、向こうから歩いてくるのが見えたからさ。おはよう、ブンちゃん」

ブンちゃんは声のする方を見上げる。ショートカットのよく似合うお花屋さんのおねえさんが優しい瞳でブンちゃんを見ていた。


「おはようございます、お花屋さんのおねえさん」

「今日はアメさん一緒じゃないの?」

ブンちゃんの周りをきょろ、と見回してお花屋さんのおねえさんが聞いた。


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