冷たいアナタの愛し方

変化する

その時ウェルシュは離宮に戻らず、城の政務室の仮眠用ベッドで布団を被って丸くなっていた。


ジェラールとルーサーに王位を継ぐなと言われたことや、闘技場内に落としてしまったあの女…リヴィという名の奴隷のこと。

ただ単に勝気で強気な可愛らしい女だから傍に置いてやろうと思っていただけなのに…あの巨人を倒してしまったのだ。

あの巨人はコロシアムの象徴だったのに…誰ひとりとして勝てなかった巨人はばらばらになって、死んでしまった。


「あ、あの女…何者だ…!?」


全てが悪い方向へと進んで行っている。

それをわかっていたウェルシュは、自分を責める者たちが揃っている離宮へと帰ることができずにがたがた身体を震わせていた。


その時――音もなく、鍵をかけていたはずのドアが…ゆっくりと開いた。

驚いたウェルシュががばっと起き上がって目を凝らすと、暗闇の中真っ白なネグリジェを着て佇んでいた女を見て息を呑む。


「り、リヴィ…?!な、何をしにきた!?」


「あなたとゆっくり話をしに」


リヴィが笑う。

その笑みは妖艶でいてかつ無邪気で可愛らしく見えて、美人に滅法弱いウェルシュは状況を忘れてそばかすだらけの頬を赤らめる。


「俺と話を?ふ、ふん、ようやく俺の魅力に気づいたんだな?」


「…ふふ、あなた…可愛いのね」


…お世辞だとわかっていつつも本気で嬉しがったウェルシュが部屋に入って来たリヴィの前に立つ。


オリビアではなくリヴィという覇王剣の人格とはよもや知らずに、そわそわしながらリヴィの細い肩に両手を置いて、にやついた。



「よく生きていたな。あの巨人を倒すとは想像してなかったぞ。お前なら俺が王になったら俺の妾にしてやっても………がはっ!?」



ウェルシュが血の泡を吐いて目を見開く。

ゆっくり自身の身体を見下ろすと、左胸には見たことのないような美しい剣が背中まで貫いて突き刺さっていた。



「なん、だ………?」


「オリビアが願ったのよ。だから…死んで」



心臓を貫かれて絶命したウェルシュが膝から崩れ落ちて倒れ伏す。

みるみる血の広がる絨毯を憐みもなく見つめていたリヴィは、ゆっくりとした足取りで政務室を後にする。


「あの子は覇王となる子。そうなってもらわなければ…困るわ」


ひっそりと呟き、後にする。
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