冷たいアナタの愛し方

本領発揮

地下に戻ったオリビアはその後、レティと共にガレリア城内部の掃除を教えてもらったりして忙しく過ごした。

やることは無限にあれど、奴隷は賃金も貰えずに粗末な食事のみ。

逃げ出したくなる理由もわかるものだと納得しながら休憩時間を貰えることになって部屋に戻ると、元々部屋にないものが置かれてあった。


「マットレスと毛布が変わってる…。それと…湯たんぽ?」


何かの軽い金属で作られた楕円形の湯たんぽ。

水は自由に使えるので、末端冷え性のオリビアはこの贈り物をとても喜び、添えてあったカードを見て笑みを零した。


『掃除をしてくれたお礼に ルーサーより』


奴隷として当然のことをしたまでだが、自分が口に出さずともこの環境を憂いてくれていることが純粋に嬉しい。

もしルーサーが王になったら様々な改革を行ってくれるかもしれない、と淡い期待をしながらあたたかい毛布に包まって休憩時間を終えると、夕食の時間になったのでキッチンに向かったオリビアは、レティにびしっと注意された。


「料理には触らないで!オリビアは運ぶだけでいいわ」


「私だって練習すれば…」


「ここには練習する食材がないのよ。ほら早くカートに並べてちょうだい」


言われるがままにウェルシュとルーサーの分の料理皿をカートに並べたオリビアは、給仕係の奴隷たちと共に会食の間に向かい、ウェルシュとルーサーがすでに到着して席についていたので、俯きながら目立たないようにレティの背中に隠れる。


「今夜はフィレ肉か。ふん、もったいないが仕方ないな」


「…?」


何がもったいないのか、とふんぞり返って座っていたウェルシュを見ていると、この酒樽のような男は手袋のような両手を叩いて、部屋の外から会ったことのない奴隷を数人呼び出した。


「レティ…これは…なに?」


「…毒味をさせようとしてるのよ。ウェルシュは毒殺を恐れてるから奴隷を使って毒味をさせた後食べるつもりみたい。もし毒が入っていたら…私たちみんな殺されるわ」


毒が混入されるタイミングは料理が作られた時だ。

給仕係が最も疑われるので、皆が緊張して身を強張らせた。


そして、ルーサーとオリビアも――
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