蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
◇今だけでいいから



結局私は、四年前から何一つ成長できていなかったんだ。
むしろ、失恋を知ってしまった分、弱くなってしまったのかもしれない。

四年前の課長との思い出でできた傷を、風にあたらないように抱え込んでいるばかりで、治そうとすらしなかった。

私はただ課長との思い出にしがみついていただけだ。
課長が好きなのに、怖がってばかりで自分から何かをしようとはしなかった。
四年前の思い出だけで十分だって、自分に言い聞かせて、欲しいのに手を伸ばそうともしなかった。

もっと、頑張ればよかった。
伝えればよかった。

恋人ができたなんて知る前に。

でも、縁談の話はずっと前からきていたものかもしれないし、どっちみち私に可能性なんてなかったのかもしれないけれど。
結局私は――。



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