蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


「ただの部下が誘うとしつこいって思われるかもしれないけど、吉野さんはそうじゃないでしょ?
大学の可愛い後輩から誘われたら、課長も考えを変えるかもしれないじゃない」
「えっ、でも私本当に仲良くないし、私もただの普通の部下で……」
「いいからつべこべ言わず一度誘ってみてよ。
先輩命令だからね、コレ」
「……はい」

ビシっと人差し指で指してくる先輩を前に、無理ですできません、なんて言葉は出てこなくて。
職権乱用、後輩いじめ、パワーハラスメント……。

色々な言葉が頭の中を巡っていたけど、言える言葉は多少嫌がりながらの「はい」だけだった。
別に上下関係がそこまで厳しいわけじゃないけれど、やっぱり先輩に逆らうなんていうのはどこの会社でも許されるわけがない。

しかも飲み会ってなると余計にそういう傾向が強まるから不思議だ。
出席自由って謳っている飲み会だとしても、欠席するにはなかなかの度胸がいるし、それなりの理由がないと多少なりとも先輩からイヤミを言われるなんて話を聞いた事がある。

それを考えれば、私のいる課は飲み会っていっても歓送迎会と年末年始くらいで、欠席しても特に何も言われたりしないから恵まれているのだろうけど……。






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