蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
◇変わらないモノ



「ここね」

先輩が入れてくれた住所のメモには、ご丁寧にわかりやすい地図まであった。
ネットで出した地図をプリントアウトしたモノだったけど、左上に記されている時間が14時23分。

その時点では合コンの話はなかったんだろうし、よほど行く気満々だったみたいだ。
社内の名簿から引っ張ってきたのか、課長のケータイ番号まで書かれてるし。

地図を頼りに着いたアパートは、シンプルな雰囲気だった。
外壁はダークグレー一色で、その周りをグルって囲むみたいにオレンジ色の間接照明がつけられていた。

課長の住む305号室は、部屋数を見る限り一番奥みたいで、頭の中に大学の頃の部屋が浮かんでくる。
あの時の部屋も、一番奥だったから。

エレベーターに乗り込んで、6Fまであるボタンを見て3の文字を押す。

私は部屋の前まで行かなくてもいいのに、心臓がドキドキしていた。

「ごめん、ちょっとコレ持っててもらってもいい?」
「うん」


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