たった一言の言葉を。
出会い

いつもの日常

ピピピ…
「ん…」
カチャッと音を立てて、目覚ましを止めた。
すぐそばにあった、ケータイが着信を知らせる。
「…もしもし」
「おはよー、菜月」
「おはよ、明日香」
モーニングcallをしてきた、親友の高城明日香。私と正反対の明日香は、みんなの憧れ的存在。
明日香とは、幼少期からの付き合い。
…いわゆる幼馴染。
「てか明日香、今何時だと思ってるの?」
「え、6時半だけど」
ふつーに言わないでください。
まだ6時半とか早くない?
「あ、菜月。」
「ん?」
「7時半に迎えにいくから」
「ん。わかった。」
あくびを一つすると、耳元で明日香からの通話が切れた音がした。
支度…しなくちゃ。
ベットから体を起こし、制服に着替えて軽くメイクをする。
控えめなナチュラルメイクだから大人しそうに見えるであろう。
髪にアイロンをかけ、朝食のパンをかじった。
時間は、明日香がくる時間帯でパンを口に入れてオレンジジュースを飲みほした。
静かなリビングには、あたししかいない。
窓のカーテンの隙間から、太陽の光が入っているようだった。
あたししかいないから、何も音がしない。
両親は、亡くなった。
正確に言えば、お母さんだけ。
お父さんがお母さんを刺したんだ…。今も信じられないけど、もう3年もたっている。
いつまでも過去に囚われちゃ駄目…だよね。
嫌な記憶を掻き消して、玄関に向かった。
「行ってきます。」
重いドアをゆっくり開ける。
目の前に移った人物は、腰に両手をあてプクッと可愛らしく頬を膨らませていた。
「菜月遅い!!」
「ごめん。」
「もしかして、思い出しちゃった?」
「…うん」
「あまり考えすぎないようにね」
「わかってる」
心配そうな顔で見てくる明日香。
こんな顔させたくないのに…。
「ほら、学校いこっ!!」
空気を無理やり変えて、明日香の手を引っ張った。
「学校まで、競争しよっ!!」
「えっちょっ、明日香!!」
私の手を引っ張り、笑顔の明日香が言う。
急に引っ張られたため、スピードについていけなかった。
< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop