夜明け前の深い闇に沈んだ景色の中で感じる、ぴんと張り詰めた空気が好き。


ひやりとした風に優しく頬を撫でられると、眠っていた体が覚めてくだけでなく、気持ちまで引き締まる気がするから。


川沿いの緩やかな下り坂を、自転車で滑り降りていく。一日の始まりを、全身に感じながら。


日の出時刻は早くなったとはいえ、辺りはまだ闇と静寂に包まれている。


唯一視界に映るのは、等間隔に並んだ街灯の灯りが照らし出す遊歩道の路面。敷き詰められた色とりどりの細かい砂利は、暗くてはっきりと色は見えない。


街灯の薄明かりの下を通り過ぎるたびに、目の前を過る白い息が忘れかけていた寒さを呼び起こす。


潮の香りを孕んだ風が、優しく髪をかき上げる。


その香りに紛れながらも決して負けていない芳香は、民家の庭先に咲く沈丁花の香り。小さく目立たない花だというのに、力強さと逞しささえ感じさせられる。


そして何よりも大好きな春を実感させてくれる、この香りが好き。


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    幼馴染み  田舎  しっとり  遠距離  天辺  群青 

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