海斗と河村さんの乗る車に近寄ることができなくて、私は駐車場から離れた。


海斗の携帯電話に連絡して、河村さんがバッグを忘れたことを告げる。しばらくして海斗が駐車場の入口まで駆けつけたからバッグを渡して、すぐに私は皆の所へ戻った。


私は何にも見ていない。
言い聞かせてる頭の中で、さっき見た光景がフラッシュバックして止まない。


何とも言えない気持ちに押し潰されそうになった私は、気づかないうちに大きく息を吐いていた。


「瑞香ちゃん? どうした? 酔っ払ったか?」


おじさんが私の顔を覗き込んで笑う。お酒は飲んでいないから、酔っ払うはずないでしょう。冗談を言ってくれるのは、おじさんの気遣い。


「うん、酔っ払いそう。お腹いっぱいになってきたし」

「嘘つけ、それぐらいで瑞香ちゃんがお腹いっぱいになるわけない。今更可愛い子ぶっても通用しないからな、ほら、もっと食べな」


と言って、おじさんは私の前に料理を並べる。


そういえば、彼は食べているのだろうか。


彼は隣に座ったおじさんの武勇伝を聴かされてる。笑みを浮かべながら何度も頷く顔は、ほんのりと紅くなっていて普段の無愛想な彼とは違って穏やかで柔らかい。


何だ、そんな顔もできるんだ。
と思ってたら、彼が振り向いた。



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