聴かせて、天辺の青
(4) 拭えない過去

◇ 途切れた時間



川沿いの緩やかな下り坂、等間隔に並んだ街灯が頼りなく灯る道を自転車で滑り降りていく。遊歩道に敷き詰められた細かな砂利の色の濃淡が朧げながらわかるほど、景色は明るさを増している。


日の出時刻は確実に早くなってきた。大あくびをしたら、潮の香りを孕んだ空気が体の中に沁みていく。


昨夜は家に帰るのも寝るのも遅かったから、珍しく今朝は起きるのが辛かった。いつもなら目覚まし時計が鳴り出す前に目が覚めるのに、今日はさすがに無理だった。


そのせいか、自転車を漕ぐ脚が重く感じられる。


今日はバイトは休みだけど、おばちゃんの家の手伝いには行かなければ。おばちゃんは今日は来なくていいと言ってくれたけど、そんなに甘えてもいられない。


だけど、いつもと違ってる。
重いのは脚だけじゃない。


何かが変わったと感じる原因は、やはり昨夜のことだろうか。昨日、彼が話したことや態度が引っ掛かって頭から離れない。


やっぱり彼は、自分から海に飛び込もうとしていたんだという確信。彼をそうさせた原因は何だったんだろう。


彼を好きになったとか、そういう感情とは違う。単に気になってしまうだけ。


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