聴かせて、天辺の青

◇ 告白



渋々向かったのは隣町にあるハンバーグレストラン。全国チェーン店で子供向けキャラクターが人気なことと、この辺りには数少ないファミレスだから平日でも混雑している。


若い主婦たちが賑やかに談笑しているのを横目に、私たちは窓際の席に座った。


彼は、何を話すつもりなんだろう。


今朝からの彼の様子を見ていても、昨日のことを覚えているのかはわからない。だけど、何か言いたいことがあるから昼食に誘ったに違いない。


昨日の不可解な行動は単に酔っていたからなのか、彼の言ったことはどこまでが真実なのか。


確かめたい気持ちと、蒸し返すのが恥ずかしい気持ちとがぶつかり合ってる。


私も知らぬふりをしているけど、内心は穏やかじゃないんだ。今は辛うじて蓋をしているけれど、早くしてくれないと下手に思い出してしまう。


だけど彼は、少しも話し出そうとしない。


手早く注文を済ませて食事が運ばれるのを待っている間も、とくに会話もなく。駐車場を出入りする車を眺めてたり、店内を行き交う店員さんを目で追ってみたりするうちに運ばれてきた食事を黙々と平らげて。


ようやく口を開いたのは、私が食べ終えてから。


「何か、甘いもの食べる?」


見計らったようにメニューを広げて見せるけど、今さっき食べ終えたばかりでお腹いっぱい。


何を考えているのか。
彼が何か食べたいから、そんなこと言うの?



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