聴かせて、天辺の青

◇ 解けて、温めて


こんなに緊張するのは久しぶりかもしれない。


やたらと胸がざわついてしまうし、何をするにも不安が付き纏う。
出かける準備をするだけだというのに、こんなにも時間がかかるなんて。
自分でもよくわからない。



何ともないと思っていたはずなのに。
こんな気持ち、もう私の中には残っていないと思っていたのに。



あまり気合を入れてオシャレするのは恥ずかしいから、いつもよりほんの少しだけ上品な服を選んだ。今日のために気合を入れたと気付かれない程度に。



あまり化粧っ気がないけれど、今日はちゃんとファンデーションも塗って、目元は軽くラインとシャドウで。いつも通り髪をひとつに束ねて、先日彼にもらったシュシュで結んで。



鏡に映った自分を見てたら、ますます恥ずかしくなってきた。



「何を気合入れてんのよ、バカ」



呟く先から目を逸らす。



こんな格好したところを見られたくないし、どんな顔をして会えばいいのかわからないし。
もう、ドタキャンしてしまいたい気分。
かなり本気で。



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