夜明け前、自転車を停めて見上げた窓に電気は灯っていない。ほっとして勝手口へと向かう。


勝手口の扉の横の小さな窓からは、灯りが漏れて換気扇が忙しく回っている。
換気扇から追い出されたいい匂いが、朝食前の体に染み込んでくる。


勝手口の扉を開けたら、彼が居た。
おばちゃんの隣に立って、何か楽しげに話していた様子。


私に気づいて緩んでいた表情を強張らせ、ふいっと目を逸らした。


素早い動き。
気に入らない態度。


「おはよう、瑞香ちゃん」


おばちゃんがにこやかに迎えてくれたから、辛うじて気持ちが持ち堪えている。


「おばちゃん、おはよう」


いつものように、笑顔で返した。


どうして起きてるの?


今にも口から零れそうな言葉を慌てて抑えて、平静を装う。


だけど、本当は嫌な予感はしていた。


もしかしたら彼は起きているかもしれない、と浮かんでいた予想をかき消しながら来たんだ。


まさか本当に起きて、おばちゃんの傍に居るなんて思わなかった。


おばちゃんの前だから言わないけど、『寝ててくれたらよかったのに』というのが実は本心。




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