製菓男子。
藤波からの電話を切る。
なにがどうなって藤波家に行かなければならないのかよくわからない。
僕はリコを探さなければならないのに。


リコは昔から、背が高かった。
ツバサとの身長差は今でも十センチくらいはあると思う。
小学生の頃は、その倍はあったかもしれない。


リコはしっかりもののお姉さんといった感じで、ツバサは無邪気な弟といった感じ。
ツバサは基本的になにも考えていないから、普段からリコがフォローしていたように思う。


周りからも姉弟と間違えられるくらいふたりは仲がよくて、僕の家にパンを買いに来ていた。
ふたりの母親は姉妹で、リコの家は母子家庭だから、仕事で遅くなるときはツバサの家で世話になっていたこともあったようだ。
ふたりが学校から帰ってくるのが夕方時だったから、少し値段の下がったパンを「夕食まで耐えられない」と言ってよく買っていった。


それが二年前くらいまでの記憶。
彼らが中学生の頃まで。
それ以降はアンティエアーが忙しくてほとんど実家を手伝っていないから、リコの様子を知らなかった。
僕も気にかけるべきだったのかもしれない。
そのくらいふたりは常連だった。
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