製菓男子。
荒川さんの説教を受けたくない。


「まだやることがありますか?」


わたしは慌てて塩谷さんに確認する。


「チヅルちゃんはもう上がって大丈夫だよ」
「じゃあ、今日はこれで失礼しますね」


お疲れさまでしたと三人に頭を下げる。


「帰るときが一番いい笑顔だね。いつもそんな顔、してればいいのに」


ほかの人が言ったら嫌味に聞えるだろう言葉も、塩谷さんだとどうしてそう聞えないのだろう。
それを理解するにはまだ、人としてのスキルがわたしには足りない。


不思議に思いながら、荷物を持ちに店内へ戻った。



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