蜜愛シンドローム ~ Trap of Kei 2 ~
二章

1.宣戦布告




四月の第二週。

月曜の午後。


絢乃は情報システム部の部会に出席していた。

部会は月に一回開催されており、今回は第二開発課が司会当番となっている。


橋本さんが慣れた手つきでホワイトボードに今月の予定を書いていく。

その横で、卓海がふむと腕を組んで手元の資料を見た。


「連絡事項が二つ。一点目はORACLEの講習について。再来週からORACLE MASTERの講習が有明で行われる。参加者希望者は明日までにオレにメールを入れること」


ORACLE MASTERはデータベースの資格の一種だ。

絢乃はふむと首を傾げた。

ORACLE MASTERは大きく分けて下位・中位・上位の資格があり、絢乃は一昨年中位の資格を取ったが、上位の資格は持っていない。

絢乃はふとバレンタインデーの時の慧の言葉を思い出した。


『何でも言うこと聞いてくれるの? ……じゃあ会社なんか辞めて、ここでずっとおれだけを見てて』


あの時は冗談かと思ったが、今思えばあれは限りなく本気に近かったのだとわかる。

もちろん慧は絢乃が会社勤めを続けたいと言えば理解してくれるだろう。

でももし将来、会社をやめて慧の仕事を手伝うとなった時、こういった資格があれば慧の助けになるかもしれない。


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