【短】『さよなら』と言えたら、苦しくないのに。
プロローグ
『――おっきくなったら、ななか、おにいちゃんとけっこんする』



ねぇ、お兄ちゃん……

小さい頃、あたしがそう言ったのを覚えてる?



あの時、お兄ちゃんはあたしの頭をグシャグシャに撫でて、


「じゃあ、ななは大きくなったら、オレのおよめさん。
やくそくな?」


そう言って、笑ったよね。


あたし、本当に嬉しかったんだよ?


早く大きくなりたいって、いつも思ってた。


大人に一歩ずつ近づいてる気がして。

毎日、朝がくるのが楽しみになった。


将来の夢は、

『お兄ちゃんの横で、ウェディングドレスを着ること』

だったんだよ。


そんな日が来ること――

ずっと、ずっと夢見てたの。


バカなあたし……

兄妹は、結婚できないのにね。



それを知ったのは、あたしがもう少し大きくなってからだったけど。


あの頃はね、本気で思ってたんだ。



あたし、お兄ちゃんのお嫁さんになるって――……

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