夜桜と朧月
吉凶

久しぶりに帰った実家は、何となく暗い感じがした。多分私がいない間、お父さんが庭先の手入れをしていないから……なんと言うか、ちょっと荒れた感じがする。



それでも元気よく「ただいまー!!」と声を掛ければ、お父さんが玄関先まで迎えに出てきてくれた。



家に上がってすぐ、母の仏壇の横にある床の間に、姉の位牌を置く。



姓が違う仏様同士を、一緒の仏壇に祀るのはあまり良くないと聞いた事があるからだ。



それから、休む間もなく大掃除に取り掛かろうとしたら、お父さんが「孫達の写真を見せろ」と言って駄々をこねたものからウザったいことこの上ない。


仕方がないから、今までに撮り貯めた写真を全部引っ張り出して、一枚一枚撮った時の状況も説明した。



「この時は、か…お義兄さんが会社の人からお祝いに縫いぐるみを貰ってきて、多希が喜んでその縫いぐるみに噛みついてるとこ。まだ歯ははえてないけどね」


「こっちは、お宮参りの時みたい。咲希は巫女さんの舞いで寝ちゃったんだって」


目尻をすっかり下げてその説明を一々聞いてるお父さんは、すっかり『じいじ』の顔だった。


本当はお姉ちゃんに説明して貰いたかっただろうな。


一通り写真を見せ終わると、気を取り直す様に私は大掃除の支度に取り掛かろうとした。



写真から目を上げたお父さんが、思い出したかのように慌ててサイドボードの上から、紙袋を取ってきた。


何だろう、これは?

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