夜桜と朧月
雪景

飲み会の次の日、つまり大晦日は、二日酔いなのか偏頭痛なのか分からない、酷い頭痛に朝起こされた。



あの夜、理由をつけて早々に飲み会を辞した後、タクシーを拾って帰り、自分の部屋に駆け込んだのだ。



咲希や多希、薫の事で一杯だった頭と心を、楓が徐々に蝕んでいく。


早く皆に会いたい。


そう願いながら、痛む頭を鎮静剤で抑えて料理作りに精を出した。




去年のお節料理は姉と一緒にここで作った。


料理を作るのが好きだった姉は、無駄のない動きで次々と料理を仕上げていったっけ。


ローストビーフは二日前から仕込んでいて、程好く味が染み込んだそれは絶品だった。



今年は、手の込んだ料理を私が作れないから、簡単に煮るだけの物になってしまうだろう。

だからつい見栄を張って買ってしまった伊勢海老は、ちょっと高くついたけど。ミートローフとお煮しめだけが力作と言えるだろうか。



新しい年を迎えるための準備をすっかり終えた頃には、除夜の鐘が既に鳴り始めていた。




父の話し相手に近所の人達が何人か、焼酎片手に尋ねて来てくれたので、家の中はとても賑やかだった。


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