夜桜と朧月

翌日は薫が言ったように皆で水族館へとやって来た。


ゆったりと動く白熊や、愛嬌を振り撒くアザラシをみる咲希と多希はご満悦だ。しきりに手足をバタつかせて喜びを体全体で表している。



途中、通路の片隅の玩具売り場で、キャラクター物の目立つ風船を売っていたのだが、咲希と多希がそれを見つけると「買ってくれ!」とばかりにせがみ始めた。


苦笑した薫が、小さい子供向けのキャラクターの風船を選んで紐を腕に巻いてやると、身体中で喜びを表している。


その近くにあったベンチに掛けて、一旦休憩していると、薫が私の手に指を絡ませた。


くすぐったくて、私も指を絡めたら、お互いの視線が合う。



同じことを考えたのか、くすくすと二人で笑う。その時、誰かに肩を叩かれた。




誰かと思い、振り返った先にいたのは――――。






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