奪取―[Berry's版]
10.対極―過去編―
 カシャン……。

 弾かれたように眸を開き、まどろんでいた意識が覚醒する。何かの音に反応し目覚めたことは理解していた。喜多は視線を巡らせることで、原因を探り当てようと試みる。しかし、それを発見するより一足早く、覚えある女性の声が喜多の耳に届く。
 素肌を覆う滑らかなシーツの海の中、喜多はうつ伏せの姿勢からゴロリと身体を転がした。左肘を立て、その手で頭を支える。ドレッサーに向き合ったまま、喜多へ声を投げた人物の背中を視界に捉えた。室内は照明が点されておらず薄暗い。ドレッサーの周囲の淡い明かりが、女性の身体を艶めかして照らしていた。

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