あの頃…

体当たりの彼女

午前10時

黒崎病院ERは朝からあわただしく医師たちが駆け回っていた

鳴り響いたホットラインから約5分後

運び込まれたのは20代後半に差し掛かるくらいの女性

貧血で倒れたという内容だったが、運び込まれた女性を見て海斗たちは眉を寄せた

「輸血急げ!」

「挿管、チューブとって!!」

「黒崎先生」

看護師やほかの医師の声が飛び交う中、静かに響くのは、神宮寺の声

ふと視線を上げた海斗が無言でうなずくのは、次の瞬間

そこで交わされた会話が分からず、しるふは隣で必死に患者の容体を観察するしかない

顔は蒼白で見るからに貧血状態

浅く早い呼吸と低い血圧

「子宮からの失血だ。立花、フォロー入れ」

苦しそうな患者の顔を見つめていたしるふに海斗が声をかける

視線を上げれば漆黒の瞳が見つめてくる

高まる緊張感とその視線にこくりと頷く

一度大きく肩で息をしたのは、気合を入れるためと自分を落ち着けるため





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