弁護士先生と恋する事務員

 告白



食事会も無事に終わった週末の夜―――。



チャプン…。


熱いお湯の中に浸かり、いつものように妄想タイム。

頭の中は、先生の事でいっぱいだった。



私は目を閉じて、先生の言葉を思い出す。




『詩織…、お前は無防備すぎるんだよ』


『――嫌いって言うな…』


『奪いたい、って言ったらどうする』


『……おじちゃん、俺が今、何しようとしてたかちゃんと見てた?』


『俺が心から食いたいと思うのは、お前の作ってくれた料理だけだ』




はあ…。


もしかしたら…


もしかしたら先生も私の事、好き、なのかも…


なんて考えて慌てて自分を戒める。



いやいやいや、待て待て待て。



うぬぼれちゃだめだ。

変に期待して、撃沈したら

私きっと、もう浮きあがれないと思う。



相手はあの剣淵先生だもん。

風船より軽いイタリア男だもん。


きっとこんなセリフにあんまり意味なんてないんだよ。

何にも考えずにポロッと言っちゃうんだよ。

きっとね。




………

……………


でも…


嫌われてはいない、って思っていいのかな。

ぎゅうっと抱きしめられたり、優しく見つめられたり。


さすがに先生だって、嫌いな子にはしないよね。

うん、嫌われていないのは確かだと思う。


私の気持ちは、もう限界まで来ちゃったみたい。

ニトログリセリンみたいに

あと少しの振動を与えられたら、きっと爆発しちゃう。



ブクブクブク……


お湯の中にズズズと沈んで考えた。



よし。



告白しよう。



ずっと好きでしたって、先生に言おう。



私はそう決めた。

 
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