弁護士先生と恋する事務員

 氷菓と犬と先生と


「ひゃ~、あっちぃあっちぃ、今日は暑いわ!」

「地裁はクーラー効いてて快適でしたけど、外に出たらいきなり汗が噴き出しましたよ。」


弁護士先生二人が出先から戻ってくると、事務所はますますにぎやかになった。

ネクタイのないワイシャツのボタンをはずして、暑い暑いとハタハタ胸元を煽いでいる。


窓を背に立つ二人の後ろから夏の日差しが差し込んでいて

光と影のコントラストが、まるで映画の一こまを切り取ったみたい。


(わあ…こうしてみるとやっぱり二人とも絵になるなあ。
並んで歩いていたら、みんな振り返るだろうな。)


かっちりした肩のラインとチラリとのぞく鎖骨。

シャツの胸元を掴む、骨ばった指先。

直線を結んで描いたような、凛々しい横顔に汗が滴っている。


(男の人…って感じ…)


先生はかっこいいなあ。あらためてそう思ったら、心臓がドキドキした。


「あー、アイスでも買ってくりゃ良かったな。」


先生の声に、はじかれた様に現実に戻った私は、慌てて言った。


「あ、私買ってきます!何がいいですか、皆さん。」

「私、チョコミントがいいな。チョコミントバーみたいなヤツ、あるかしら。」

「チョコミントバーですね、了解です。」

「じゃあ僕はさっぱりした感じの…なんだろう」

「ガリガリ君のソーダ味みたいなのはどうですか?」

「ああ、それお願いします。」

「わかりましたー。剣淵先生は?」

「俺、一緒に行くわ。」

「え?」
 
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