弁護士先生と恋する事務員

 目撃

慌ただしい一週間が過ぎ、また月曜の朝がやってきた。
いつものように事務所への道のりを歩く私の両手には、少々大きめの荷物が。


ソーダ色の空
さえずる鳥の声

どこからともなく風に乗って
名も知らぬ花の芳香が漂ってくる。


爽やかな朝の景色を満喫しながら
私は週末の、先生との会話を思い起こしていた。


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「詩織…。詩織の作ったカレイの煮つけ…食わせてくれよ。」


突然起き上った先生は、私の手首をパシッとつかむと
あどけない子供みたいな目で私を見つめる。


「は……はい!?」


「カレイの煮つけ、俺に作ってよ。………ダメ?」


「……い、いえ、ダメじゃないですけど… 起きてたんですか?」


いつから起きていたんだろう。

先生の手に握っていたメッセージカード、そっと抜き取って盗み見ようとしていたの、バレてたりして…


「今目ぇ、醒めた。なんかふわっといい匂いがするなーと思ったらお前だった」


先生はそう言って、寝起きの少しトロンとした目で私を見つめるからドキン、とした。
と思ったらいきなり


「ぐあーーーーーーーあ!!」


両手の拳を限界まで天に突き上げ、猛獣の様な咆哮、じゃなくてアクビをしながら立ちあがった。


「あーあ、寝た寝た。」


(び、びっくりした… なんちゅーアクビ…怪獣か!)


「いやー、なんか寝ながら腹減ったなーと思っててさ。お前の顔見た途端、カレイの煮つけ、思い出したんだよなー。店屋物(てんやもの)ばっかりじゃ、最近飽きてきたからよ。」

「そ、そういう事ですか。いいですよ、私の料理で良かったら。……だけどどこで…」

「ここ。事務所。」

「え?…ああ…」


ここは元喫茶店だった場所だ。純喫茶だったから、料理は出さなかったはずだけど、裏にはガスコンロと小さなキッチンスペースがある。


「なるほど、事務所でですか。……わかりました!月曜日、先生の晩ご飯、私が作ります♪」


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