弁護士先生と恋する事務員


午前8時40分。


「おっはようございまーす!」

事務所のドアが開いて、賑やかな声と共に経理の柴田さんが入ってきた。

柴田好恵(しばた よしえ)。

私より少し上の娘さんがいるから、たぶん50代くらいだろう。
身長は小さめで、少しぽっちゃりしている。


ひっつめ髪に、赤フレームのメガネ。

少し歯が出ている所や、よくしゃべってがははと笑う感じなんかが
柴田さんと同じ苗字のお笑い系女優さんにそっくりだ。


「あら、先生と詩織ちゃん今朝も仲良しねー。何の話してたの?
私にも教えて?教えて?」


おしゃべりな柴田さんは、来た途端にぺらぺらとまくしたて、私たちをからかう。


「詩織と俺との秘密だから、柴田さんにはナイショ。」


先生が唇に人差し指を立てて悪戯っぽく言う。


「昨日見たテレビの話ですよー。」

「なーんだ、そうなの。もっと色っぽい話かと思ったわ。」

「言うなよー、詩織。」


先生が不満げに口を尖らせる。

柴田さんはいつも先生と私が仲がいいって言うけれど、私だけが特別なわけじゃない。

基本先生は、誰とだって仲のいい人なんだ。
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