弁護士先生と恋する事務員

 センセイ、ダウンする



次の日も、その次の日も


事務所の中は蒸し暑く


空はどこまでも青かった。


~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*


「ただいま。柴田さん昨日のファイルできてる?」

「できてますよー、はいこれ。」

「サンキュ。安城、新規の依頼主、明日の朝一で来るから、用意しとけよ。」

「わかりました。」


外回りから帰った途端、次々に指示を出す剣淵先生。

先生はいつにも増して仕事に打ち込んでいる。


そして、それ以外にも……


コンコン、カチャ…


「コウちゃんいるー?」


夕方事務所に来たのは先生の小中時代の同級生、雅美さん。


「どうした、雅美」

「この前はお世話になりましたー。これ、皆さんで食べて。」


雅美さんは柴田さんにスイカの入ったビニール袋を渡した。


「あの常連さんすごく喜んでね、会社の飲み会は必ずうちの店使ってくれるって。」


以前雅美さんから頼まれた、常連さんの金銭トラブルは

訴訟に持ち込む事なく、内容証明だけで解決することができたのだった。


「コウちゃんのおかげよ。本当にありがとうね。お礼と言ってはなんだけど、タダにするから飲みに来てよ。新しい子も入ったのよ。」

「おー、そうか。それじゃあ顔見に行かねえとな。」

「若くてかわいいわよ。コウちゃん気に入ると思うわ。」

「そうかそうか。それじゃあ今日でも見に行くか。」


(先生っ………)


私は思わずガタン、と椅子を鳴らして立ちあがった。


思いのほか大きな音がして、事務所中の視線を集めてしまった。


「お、どうした、詩織。」

「え、いえ…あのー……」


ここの所、仕事にも遊びにもハイペースな先生が

どうも無理をしている気がして気になっていたのだ。

今日だって時々、浅い呼吸を繰り返したり

額に手を当てて疲れた顔で俯くことがたびたびあった。


「先生、最近がんばりすぎて無理してるんじゃないかなあと思いまして。

今日も体調悪そうだし、わ、私がでしゃばってこんな事言える立場じゃないんですけど…

今日は家に帰ってゆっくりお休みになったらいかがかと…」
 
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