雪解けの水に潜む、紅
探せ、惑え



入り口に入ったとき、ゼリーのようなものに覆われる感覚に陥った。
『お前は、何を望むのか?』
女の子の声が聞こえた。その空間全域に響き渡っているようだ。
「私は、自分が正しいと思う方に進みます。」
答えは要らない。導きは要らない。私は自分で答えを導き出す。
『それじゃあ、頑張ってね。』
プツン、という音を立てて少女の声は消えた。
少し寂しがっているようにも感じた。
ピンク色だった視界は、一気に開け目に見えているのは大昔の城の様子だった。
小さな女の子が庭を走り回っている。その後ろを男の子が追いかけて、動物もいる。
微かだが、空を羽ばたくドラゴンの姿も見えた。
城のバルコニーからは、優しそうな国王と女王が2人を見下ろしていた。
とても長閑でとても幸せそうな、写真を見ている気分だった。
一歩踏み出してみても誰も気が付かない。
少女の手に触れてみても、男の子の肩に手を置いてみても、感じない。
こちらを見ない。所々ノイズがかっている。
これは記憶なのだと思った。先ほどの声の主の遥かな昔の、記憶。
きっとこの少女は王女さまで、男の子は王子さま?
これを見ている声の子は王子さまに恋をしていたの?
報われない恋・・・。
見上げてみると、王も女王も優しさの中に厳しさも備えている。
恐らく、下々の者とは結婚などさせてくれなかっただろう。



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