素敵彼氏の裏の顔
現れた彼は……
気付いたら、あたしの頬は濡れていた。
頬だけじゃない。
全身から水が滴り落ちていた。
遠くで雷鳴が聞こえ、大きな雨粒が激しくあたしを打ちつけた。
春だというのに雷か。
その気まぐれな天気は、まるで淳ちゃんのよう。
あたしは身をかがめ、雨宿りする場所を探すために歩いた。
雨の中、古びたオイルのような匂いがする。
そして近くで波の音もする。
ここはどこだろう。
がむしゃらに走ったあたしは、完全に方向感覚を失っていて。
気付いたら、倉庫の建ち並ぶ工場みたいな場所に出ていた。
しかも、現在は使われていないようで、辺りはしーんと静寂に包まれていた。