素敵彼氏の裏の顔

現れた彼は……







気付いたら、あたしの頬は濡れていた。

頬だけじゃない。

全身から水が滴り落ちていた。

遠くで雷鳴が聞こえ、大きな雨粒が激しくあたしを打ちつけた。

春だというのに雷か。

その気まぐれな天気は、まるで淳ちゃんのよう。



あたしは身をかがめ、雨宿りする場所を探すために歩いた。






雨の中、古びたオイルのような匂いがする。

そして近くで波の音もする。




ここはどこだろう。




がむしゃらに走ったあたしは、完全に方向感覚を失っていて。

気付いたら、倉庫の建ち並ぶ工場みたいな場所に出ていた。

しかも、現在は使われていないようで、辺りはしーんと静寂に包まれていた。


< 83 / 401 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop