織江 真(オリエ マコト)。29歳。30まで、あと少し。

 恋愛? 別に興味ない。さらに結婚? とんでもない。

 男なんて、ロクな生き物じゃない事を私は知っている。

 だから私は、男という生き物を、全く信じてはいない。

 今、私がこんなにも生きることに必死なのは、そんな男という生物のせいなのだから――……。



* 



 「お、織江さん!」

 え?

 「なに?」

 名を呼ばれ、私は背筋を伸ばし、パソコンに向かい合う体を、声の人物に向けた。

 山田君か……。

 「もしかして、また?」

 私は鋭い目で、彼を見た。

 怯えるような態度の山田君は、二年目社員。

 そろそろ社会人として、ちゃんとしてもらいたいものだと、私は思った。

 「す、すみません。経理の織江さんにはいつも迷惑をかけてて、その、申し訳ないんですが――」

 私は言葉を遮り、問いかける。

 「領収書を、失くしたの?」

 「―――はい」

 山田君は、怯えた顔で俯いた。

 まるでライオンの前の、小動物。

 私の前で、半泣き状態の山田君は、第三者の目から見れば、まるで被害者よね。

 悪いのは山田君なのに、これじゃ私が悪者みたい。

 まぁ、人の目なんて、どうでもいいけど。私は、間違ってないもの。

 困った子なんだから……。

 再発行された領収書は、その再発行された日付に変わってしまう。

 それでは決済の都合が悪い。

 「あ、あの! 僕、考えたんですけど!! 請求書をもらえるか聞いてみます!」

 山田君は一生懸命に考えたのか、私に提案をする。

 でもね。請求書って言うけど、もう商品は届いているのよ?

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