男を信じていない私には、一生、無縁。

 言われることなどないと、思っていた言葉を、私は言われた。

 理解、出来ない……。

 この人は、いったい何を言っているの?

 キラキラしているロビーの前で、突然のプロポーズ。

 普通の女性なら、泣いて喜ぶ??

 って、いくらなんでも。ほとんど知りもしない人間からなんて、喜ぶはずないわ。

 私は動じる素振りを見せず、冷静を装い、冷たく返した。

 「冗談に付き合う暇はないんです」

 「冗談に付き合わせるつもりもないし、そんな、くだらない冗談を言う暇は、俺にもないよ」

 は??

 春登は爽やかに、ふわりと優しく笑う。

 それはまるで、窓の外で木々を揺らす、春風のように。

 でも、そんな笑顔に、私は誤魔化されないわ。

 この人、私をバカにしているの? 言っている意味が、全く分からないわ。

 目をパチクリとさせる私に、春登は続ける。

 「とりあえず、話を聞いて欲しいんだ」

 は、話って……

 「お断りします」

 私はキッパリと返した。

 春登は断られるとは思っていなかったのか、一瞬言葉につまると、また笑う。

 「別に、ホテルの一室に連れ込もうなんて、思ってないよ?」

 何よそれ。

 そんなこと、思ってもいませんでしたけど?

 自分は紳士だって、そう言いたいわけ?

 「そんなことを疑って、お断りしたわけじゃありません」

 「そう? それも問題だと思うけど……」

 「え?」

 問題って、なによ。

 「ここはホテルのロビーなことを、君は理解してる??」

 はぃ? それが何??

 言葉の意味を、理解出来ない私を見て、春登は笑った。

 「君は女性なんだから、男にこんな場所で誘われたら、警戒すべきなんだよ」

 子供を見る様に、優しい目になる春登にイラッとした。

 何が言いたいのよ。

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