俺は、真に呉服屋の仕事を手伝わせるつもりはなかった。

 それを父や母に告げると、渋い顔。

 そんな顔をされても困る俺は、両親を亡くし、苦労をしてきた女性で、真には幸せになって欲しい。

 苦労をさせたくない。家庭を守って欲しいんだと、告げた。

 すると、色んな女性と仲良かった俺を知る両親は、逆に感動していた。

 息子がやっと、一人の女性を愛せるようになった。

 しかも、こんなにも、深く愛し、大切に考えているなんてと、嬉しそうだった。

 真には、どうしても出席して欲しいパーティーなど、それにさえ顔を出してくれればそれでいいと言い、2人はこころよく納得してくれた。

 もう少し手こずると思っていた俺は、ホッとする。

 よかった……。

 結婚する条件として、俺は、真に言った。

 俺に惚れるなと。

 俺を束縛するなとも。

 二人の関係は外では夫婦だが、家ではただの同居人。

 俺には干渉はしないでほしいとも言った。

 ただ、これだけ挙げたが、俺は思ったんだ。これじゃ俺はただの、暴君に成り下がるんじゃないかと。

 それは、違う。そうじゃない。俺はちゃんと紳士なんだ。

 だから俺は、付け加えた。

 結婚といっても、本当はただの同居人。

 俺たちは契約したようなものなんだから、俺は家業を押し付けるつもりはないと。

 その約束を、俺は果たせたわけだ。

 いくらか生活費を入れるから、真は好きにすればいい。

 別に夜の関係まで、強制もしないし、お願いもしない。

 ただ、出来れば家事全般はお願いしたいとは、真に伝えた。

 俺と真の新居となるのは、俺のマンションだ。

 キレイに、常に片付いてはいるが、俺は家事が得意じゃない。

 洗濯はクリーニングだし、料理はせずに外食が多い。おかげでキッチンは美しいまま。

 部屋もなかなか汚さないのでキレイだし、ホコリが気になればハウスクリーニングを頼む。

 結婚しても、まだそんな生活を続けていては、きっと怪しまれる。

 バレる小さな可能性は、未然に防げるのなら防ぐのが得策だ。

 真は「同居人なのにですか?」と、言ったが直ぐに頷いてくれた。

 自分の事をするついでだそうだ。

 生活の保障があるのだから、それは仕事だと思うようにすると、言っていた。

 「さて……」

 俺はボソリと呟くと、時計を見た。

この作品のキーワード
偽り  借金  呉服屋  偽装  甘切  じれじれ  和風  すれ違い  偽装結婚  嘘つき 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。