よく、女性はウエディングドレスが夢だと聞く。

 お姫様の様なドレス。ソレを着て、教会で式を挙げる。

 そんな願望は誰しもが、もっているものだと言われがちで、だけど必ずしも、全ての女性の意見では無い。

 その例外は、まさに彼女。真がそうだ。

 真は俺を前に、顔色一つ変えずに言った。

 式なんて挙げる必要なんて無いし、そんなものは、お金の無駄遣いだと。

 しかも、ドレスに興味も無い。白無垢にも興味ない。長い時間拘束されるのは嫌だと言った。

 あげく、誓いの言葉も、誓いのキスも、冗談じゃないと言い放った。

 清々しいくらい俺を突っぱねる真に、笑えた。

 なかなか慣れない嫌われっぷりは、笑うしか反応が出来ないよ。

 気持ちいくらい、俺を突き放すもんだよね。

 真の気持ちは、よく分かった。

 でも、はいそうですかと。そんな、すんなり式を挙げないでいいと、決まるはずがない。

 困ったことに、頑固な父や母を説得するのには、思っていた以上に一苦労だった。

 何を言っても、納得しない2人は、どうしても、息子と、自分の娘になる真の晴れ姿を見たいと言って、聞かなかった。

 それがやっと、問題解決に至ったのは、母が上げた妥協案のおかげだ。

 それは、式は挙げなくていい。だから、せめて写真くらいは、撮って来いということだった。

 そのことに父も、妥協するように、頷いた。

 呉服屋だからと言って、白無垢がいいなどと、こだわらない。ドレスでいいから。むしろ若い女性はドレスが夢なハズだと、言いだして、一生の思い出なのだからと、父も母も2人して真剣な顔だった。

 別に悪い事ではないけれど、全く……。ずいぶん真は、気に入られたものだと思う。

 きっと2人は、真が息子を愛し、思いやる女性。

 そして、しおらしい、いわゆる貞淑な女性に見えたんだ。

 式も、新婚旅行もいらない。俺の仕事に支障をきたしたくないし、そんなことをしなくても幸せなんだと、真は結婚式や新婚旅行という、贅沢を断ったから。

 それはもちろん、建て前だ。本当の拒否理由なんて、言えるはずがないからね。

 俺としても、正しい、問題ない言葉選びだと思った。

 ただ、問題だったのは、正しすぎる回答だったこと。

 その結果、真の言葉は、父と母の心を打ったんだ。

 式はダメでも、せめて写真だけはと、真に花嫁衣装を、どうしても着せてあげたいという、そんな親心が2人に生まれてしまった。

 真も2人に再度呼び出され、しつこい説得攻撃。

 さすがに困った彼女は、押しに負けて、写真だけならと頷き、了承していた。

 正直な話、俺としてはどっちでもよかった。

 写真だけでなく、結婚式を挙げるのもいいと思う。

 ハネムーンとやらは、行く先々で手厚いサービスを受けられると聞くし、一度くらい、それらを、体験してみるのもいいんじゃないかと思っていた。

 だけど真からすれば、心底嫌なんだろうな。妥協して頷いた、たかが写真だけでも、俺が想像するよりはるかに嫌に違いない。

 それでも仕方ないと、割り切りの早い真は、物分かりが良いのか、それとも諦めが早いのか……。

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