春登は扉を開けると、以前、私を着つけた部屋へと連れて行く。

 同じ部屋なのに雰囲気が違って見えるのは、桐ダンスが増えているからだと思った。

 もしかして、この桐ダンスまで購入したの??

 呆気にとられている私の手をはなすと、春登は桐ダンスの前で、振り返る。

 「どれがいいかな。着たいものを選んで?」

 え、選んでって言われても……。

 「私は、別に……」

 反応に困る私は、その場を動けない。そして直ぐにハッとした。

 ちょっと、まってよ。なに流されてるの?

 私は息を大きく吸うようにして、身を立てると、直ぐに続けた。

 「どうして着なきゃならないのよ。さっきは気が向けばって言ってたじゃない」

 「俺が見たいからだよ。ここの着物は全部、俺が見立てた。似合わない着物は一つもない」

 サラリと即答し、ジッと自信ありげに見る、真っ直ぐな目。

 そんな春登は、私の落ち着きを失くすように思った。

 なによ、それ。よく言うわ。

 私は黙ったまま、フィッと目を逸らす。

 「いいじゃないか。暇つぶしに付き合ってよ」

 言葉を返さない私に代わり、春登は軽やかな、気持ちのいい声のトーンで言った。

 それはあまりにも、俺様な発言に思う。

 ひ、暇つぶし!?

 「なによそれ」

 私は思わず、強く春登を見る。

 喧嘩を売っているのかと、思えた。

 睨む私に、春登は気にする様子も見せず、怯むこともない。

 それどころか、軽く首をかしげるように、艶やかに笑う。

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