あの日まではただの可愛い女《ひと》。

もちろん、復讐に決まってるぢゃん。

　自分の桜さんへの思いを自覚したあと、結局一睡も出来ず、くかーと、のんきそうに眠った桜さんの顔を見て夜が明けた。俺の方は出張中からあまり睡眠を取れておらず、はっきり言って寝不足にもほどがあるっていうのに。
　なんていうかどっか本当にのんきなタチなんだろう、この人は。あれほどがたがた震えて怯えを宿してたって言うのに、こてっと目をつぶって落ちてからは本当にのんきそうな寝息しか聞こえない。
　しかも、俺の腕の中だよ？
　もうちょっと何で緊張したり、頬赤らめたり、意識したりしないんだよ！？
　あんだけ、俺の腕の中で啼いたくせに、まったく意識しないわけ？
　本気で寝てる間にいたずらしてやっても気がつかないんじゃね？と少し思ったが、『何もしない』という約束を思い出して、ぐっとこらえた。

　あーでも、一矢報いてやりたい。

　そう思って、俺は起きだして、コーヒーを入れることにした。
　実際3時間～4時間睡眠位だからさぞかし眠いだろう。
　少し濃い目のコーヒーになるようにセットして、目を覚ますために熱いシャワーを浴びた。少し思いついて、体のラインが結構出るニットをかぶる。
　くっくっく。桜さんが一体どこのパーツに惹かれてるかとか知ってるからこそ！
　おぼえてろ、桜さんめ。
　そろそろ起こさないといけない時間なので、桜さんを起こしに行く。

「桜さん、朝ですよ～」

　桜さんは、時間が少なくても起きれるタチなのか、それともやっぱり慣れない場所だからか、すぐに眼を開けた。

「う。おはよーごじゃいます…」

　寝ぼけて、ちょっと舌足らず。
　ああ。なんてかわいいんだ。髪もちょっと寝癖ってほどじゃなくて乱れてるんだけど、無防備な感じがたまらん。
　ちょっと俺の顔を見てギクリ。としたのでしめしめと思った。
　が、軽口を叩いた後、身を起こした桜さんに、正直それどころじゃなくなった。
　ちょっ。パジャマが大きいのもあるんだけど、一番上のボタンが外れてしまっていて、まろい肩が片側見えてますがな。
　その胸の谷間…。
　アンタほんとひどいなっ。
　閉じ込めて、どうにかしてやりたいっ。

「…コーヒー入ってますよ、着替えたら来てくださいね」

　やっとのことでそう搾り出して、リビングに戻った…。
　濃くて熱いコーヒーを飲んでごまかしたのはいうまでもない。