溺愛マイヒーロー
黄色のチェック事件
つき抜けるような空の青さに、俺は目を細めてぐっと伸びをした。

あたりで青々と茂る草たちからは、植物の独特の匂い。

夏だねぇ、なんて思いながら、俺は芝生に寝転がったままぼんやりと空を眺める。


……と、突然自分の顔にできる影。



「こらっ、部活前に何寝てんの?」

「……おー、琴里」



ひょっこり顔を覗き込んできたのは、俺が所属する野球部のマネージャーである、同い年の汐谷 琴里。

制服姿で仁王立ちする彼女のその表情は、すでに練習用のユニフォームに着替え、にも関わらずのんびり芝生で大の字になっている俺を非難している。

それでも身体は起こさずに、会話を続けた。



「やー、なんかいい天気だからさー。こんな日に芝生で昼寝でもしたらさぞ気持ちいいかと」

「バカ、これから運動しようって奴が何なまけたこと言ってんのよ」

「だってさー、空超青くてキレーじゃん。見とかないともったいなくね?」

「……まあ、」



言いながら、琴里もちらりと空に目を向ける。

俺は満足げにそんな彼女を眺め、そしてまた口を開いた。
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