溺愛マイヒーロー
小さな手に感謝
世界史の授業が終わり、教科書を机の中にしまっていた俺の肩を、ぽん、とひとつ叩かれた。

振り向けばそこには、クラスメイトの男子A。



「何かな、男子A」

「いや何その呼び方?! 俺秋本ですけど?!」

「なに秋本」

「……うん、もうどうでもいいや」



そう力なく呟いて、がっくりとうなだれる秋本。

なんだ、ちょっとしたお茶目じゃないかー。



「どしたん、何か用事?」



改めてそう訊ねると、秋本は気をとり直して話し始める。



「4組の汐谷 琴里ってさ、野球部のマネージャーなんだよな?」

「ああうん、マネージャーだね」

「……あの子、彼氏とかいる?」



おっと、そういう系の話題ですか。

若干期待の込められたその眼差しに、俺はうーんとうなってあごに手をあててみせる。
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